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08/11  私は存在が空気。

一度行った場所へ瞬間移動できる引きこもりの少年、
存在感を空気の様に消せる少女、念力、自然発火、…etc。
超能力を持った少年少女のイケてない日常と淡い恋を描いた物語。

中田永一版のSPECかグラスホッパーを期待したけども、
ヒリヒリしたりワクワクしたりする手に汗握る展開より、
のほほんとした現実感と切なさがいかにも中田永一っぽい。

超能力という圧倒的なアドバンテージがありつつも、
絶妙な制約と確かな空回りで上手くいかない恋はいたって青春。
タイトルは秀逸。

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    | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
    07/21  こぼれる。

    本屋で働く雫は妻子ある大介と付き合ってしまう。
    関係に悩んだ雫は別れを切り出す決心をするが…という話。
    それぞれの視点で描かれる連作短編集。

    単なる人の道を外れた恋の物語ではない。
    変われない自分から生まれ変わろうとする勇気の話、
    糾弾するものと擁護するものとの正義の話、
    はかなくても揺るがない愛の話、不条理な現実の話。
    このわずかな登場人物の中で
    何重にも折り重なった相関のなんと美しい事。

    文筆業にも定評がある女優の酒井若菜さん。
    一見ドロドロした生々しい展開かと思えば、
    丁寧に前進していく…前進を促していく構成に
    作者の優しさを見た気がする。
    ルービックキューブの使い方とタイトルにセンスを感じる。

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      | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
      07/14  明るい夜に出かけて。

      深夜のコンビニでアルバイトをするトミヤマの唯一の楽しみは深夜ラジオを聴くこと。
      ひょんな事から番組の缶バッチを持った少女に声をかけてしまい不思議な交流がはじまる。
      SNS上の絆と孤独、深夜ラジオにすがる不器用な若者の熱量を描いた物語。

      お悩み相談的なのじゃなくてガチなハガキ職人の方のラジオリスナー。
      青春ドラマとしては起伏に物足りなさを感じるし、
      ドキュメンタリーとしては登場人物のフィルターを通すので臨場感が物足りない。
      それぞれの物足りなさに加えて佐藤多佳子の世界観とアルピーとの違和感があいまって
      独特のリアリティーを帯びていると思う。

      フィクションの裏にノンフィクションを描く手法はこれまでにもあるが、
      史実とかじゃなくてカルト的人気を博す深夜ラジオをチョイスした事に
      作者の愛を感じずにいられない。

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        | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
        06/23  芥川症。

        芥川竜之介の名作を医療エンターテイメントとしてパロディした短編集。
        死因を巡って病院内で証言が二転三転し真相は藪の中になってしまう「病院の中」。
        他人の寄付金によって生きながらえた怠け者に付き纏う黒い勇気と黒い正義「他生門」。
        蜘蛛の糸を教訓に地獄から救いだしてくれそうな生き物を過保護にする「蜘蛛の意図」。
        ブラックユーモア満載の全七編。

        単なるタイトルの引用だけではなく、
        原作の持つ不条理さ滑稽さグロテスクさがきちんと感じられる出来栄え。
        医学の確かな知見から専門分野のリアル路線で行けば良いのに、
        テンポや着眼点が普通以上のクオリティだと思う。

        装丁から勝手に想像して
        容姿や思考が芥川っぽくなる奇病を面白おかしく描いた話かと思ったら純文学だった。
        や、秀逸なオマージュか。

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          | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
          06/09  という、はなし。

          素敵な世界観のフジモトマサルのイラストと
          不思議な世界観の吉田篤弘の文章がセットになった物語集。
          さまざまな場面で読書する動物と後付けされる煮え切らない描写が、
          どこか人間味が溢れる感じでとても良い。
          二十四話を大事に読みたくなる。

          普通は文章にイラストを添えるところを、
          本作はその逆、挿絵ならぬ挿文。その背景を理解した上で、
          吉田篤弘のモヤモヤとフジモトマサルのニヤニヤを含めて味わいたい作品。
          あとがきはまえがきでも、よかったんじゃないだろうか。

          本の中で冒険するようないつもの物語感とは違って、ちょっとひと休みな話かな、
          と思いきや心ここにあらずな感じ。本に対する愛だけは変わらない。

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            | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
            05/12  猫河原家の人びと(一家全員、名探偵)。

            「推理せざる者、食うべからず」という家訓の下、
            推理を披露しないと夕飯がもらえない家族とその家から必死に出たい女子大生の話。
            今夜もそれぞれの名探偵が持ち寄った難事件について、
            捜査会議という名の家族会議が始まる。

            ツッコミ所は満載。
            ライトなユーモアミステリー仕立てで結構ロジカルな本格推理が楽しめるかと思いきや、
            意外とスッキリしない感じ。
            推理好きなのか、推理小説好きなのか、
            謎解き好きなのか、捜査好きなのか、解決好きなのか。
            探偵キャラ揃い踏みの一家というフリが効いてる割に、物足りない読了感。

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              | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
              02/24  ニセモノの妻。

              夫婦をテーマにした短編集。
              引っ越ししたマンションで何故か他の住人の誰とも会えない話。
              突発性真偽体分離症という自分とそっくりなニセモノが存在してしまう話。
              坂を愛するあまりに坂を占拠してしまう愛好家の話。
              仲睦まじい夫婦に起こった悲しい事故の話。

              日常の中に溶け込んだ非日常の世界から垣間見る不思議な物語。
              ブラックな生真面目さと凝ったディテールを独特のユーモアで包んだような
              三崎亜記感を存分に楽しめる作品。
              シニカルな不条理とハートフルな夫婦関係とほんの少しの狂気が織り成すハーモニー。

              エッジの効いた設定が多いから長編よりも短編の方が向いてる作家さんって印象だったけど、
              ギミックは分かるけどイマイチ読み応えが物足りない話が多くて意外だった。

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                | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
                01/20  キッチン風見鶏。

                幽霊と交信ができるという特殊なチカラを持っている坂田翔平は、
                キッチン風見鶏でアルバイトをしながら漫画家デビューを目指していた。
                母娘三代で切り盛りするオーナーシェフや温かい常連客との交流を通じて、
                家族の絆、夢を追う強さ、友情、縁、を描いた心暖まる物語。

                料理で謎を解くようなストーリーかと思っていたけど、
                むしろスピリチュアル設定の方がメインのファンタジーだった。
                結論よりも随所に散りばめられた哲学的な言葉を楽しむ作品。
                誰もが悩みを抱えていて誰もがそれを応援している、
                そういう所が好評に繋がっているのかも知れない。

                最初っから幽霊の設定が提示されているので、
                どうしてもシックスセンス的な派手なアクロバットに期待が注がれるけど、
                割りと素直な話だった。構成とストーリーテリングの妙。

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                  | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
                  01/13  電球交換士の憂鬱。

                  世界でただ一人、電球交換士という肩書きを名乗る男の物語。
                  とある街の行きつけのバー「ボヌール」で顔を合わせる仲間達に語られるのは、
                  失われゆく古き良きものへの想いと出会い、それにまつわる不思議な話ばかり。
                  今日もまた電球交換士の憂鬱は続く。

                  謎と愉快が絶妙にブレンドされた魅惑の連作短編集らしいのだけど、
                  割りといつも通りの吉田篤弘で、焦燥感と美学と言葉遊びとだった。
                  以前、もう少しミステリー的なエッセンスを所望していたので、うってつけの作品だった。

                  伏線というかドラマとしての要素がしっかりしてるので読みやすかったと思う。
                  いっそもっとスチームパンクな世界観でも良かったと思うけど。

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                    | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
                    12/30  永い言い訳。

                    小説家の津村啓こと衣笠幸夫は、ある日突然事故で妻を亡くす。
                    夫婦関係が冷えきっていた為、表面上しか悲しむことが出来ない幸夫だったが、
                    同じ事故で妻を亡くした陽一とその子供達と出会い、
                    不思議な家族関係を構築していく、
                    という話。

                    生死から真っ向に向き合う話を選んだつもりが真逆だった。
                    作家の浮世離れ感というか、知ったかぶり感というか、
                    デキる感じを出しときながら足りてない感じが絶妙。
                    現実と対峙するまでの壮大な遠回りというか、
                    あ、永い言い訳ってそういう意味か。

                    「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」
                    って素敵過ぎるコピーだなと思った。

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                      | author : すペ3 | category : book | comment : comments(0) |
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